今年度(平成27年度)の税制改正に於いて、直系尊属(父母、祖父母など)から一定の要件を満たす結婚資金や子育て資金を一括して贈与を受けた場合に、受贈者における贈与税の課税が免除される制度が創設されました。これは平成26年度税制改正で創設された教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置と同様に、いわゆるシニア世代が有する財産の早期移転を促す政策に基づくものです。

(1)概要
20歳以上50歳未満の直系卑属(子・孫など)の「結婚資金」や「子育て資金」に充てるために、平成27年4月1日から平成31年3月31日迄の間に直系尊属から一括して行なわれた『一定の贈与』について、贈与を受けた年での贈与税の課税を繰り延べたうえ、受贈者が期限内に結婚資金等に支出した金額については贈与税の課税が免除されます。

(2)非課税限度額は?
非課税限度額は受贈者ごと1,000万円とされていますが、その細目は次の通り限定されています。
① 結婚資金:300万円(上限)
② 子育て資金:1,000万円(結婚資金に充当した額がある場合には1,000万円から結婚資金充当額を控除した残額)
(注):非課税限度額は受贈者ごとに判定されるため、例えば父、母、祖父及び祖母からそれぞれ贈与を受けた場合でも非課税の取扱を受けることができるのは総額で1,000万円となります。

(3)適格受贈者となる要件とは?
① 20歳以上50歳未満であること
② 民法上の「子」であること
(注):養子縁組を行った「養父母」と「養子」の場合には、「養子」は「養父母」との関係に於いて受贈者となります。但し、養子縁組の解消の場合については後出7.②を参照して下さい。

(4)『一定の贈与』とは?
① 適格受贈者に対して、その者の直系尊属が信託銀行等との間で、適格受贈者を受益者とする信託契約を締結した場合
又は、
② 適格受贈者がその直系尊属から書面による金銭の贈与を受けた場合で、
a. その金銭を銀行等に預入を行った場合
又は、
b.その金銭で証券会社から有価証券を購入した場合
(注):①,②のいずれの場合も特定の金融機関に結婚・子育て資金口座を開設し、その金融機関を経由して「結婚・子育て資金非課税申告書」(必要に応じて「追加結婚・子育て資金非課税申告書」)の提出を行う必要があります。
(注):適格受贈者の叔父や叔母は尊属ではあるが傍系尊属となるので、本取扱の適用は受けられません。

(5)結婚・子育て資金とは?
① 「結婚資金」:婚姻の日前1年以内に支払われる (a)挙式費用、(b)衣装代等の婚礼(披露宴)費用等
②[子育て費用]:(a)分娩費等、(b)産後ケア費等、(c)不妊治療費等、(d)子の医療費・保育費等
(注):費用の内容等は内閣府ウェブサイトの『結婚・子育て資金の範囲に関するQ&A』に個別具体的に且つ詳細に掲載されていますので、実際の支出に際しては非課税対象に該当するか否かを確認されることをお勧め致します。
URL: http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/qa.pdf

(6)結婚・子育て資金口座の契約の終了時期とは?
① 適格受贈者が50歳になった日
② 適格受贈者が死亡した日
③ 結婚・子育て資金口座の残高がゼロになり、且つ、金融機関との間で管理契約の終了の合意があった日
(注):①及び③による契約の終了の時点で管理口座に残額がある場合には、その残額はその年の贈与税の課税対象となります。残額について累進税率による課税となりますので、注意が必要です。
②による契約の終了の場合は、その残額に贈与税の課税は生じないが、死亡した適格受贈者の相続財産となるので相続税の課税対象となります。

(7)適格受贈者が離婚等した場合の取扱は?
① 適格受贈者が離婚した場合でも、その適格受贈者とその者の子供(子育て資金の対象者)との間の親子関係は継続するので、例え親権を有しないこととなった場合であってもその子の子育て資金に該当する支出は非課税の対象となる。
② 適格受贈者が養子縁組契約を解消した場合にはその適格受贈者と養子であった者との間の親子関係は解消されるので、養子縁組契約の解消後に支出した金銭は非課税の対象とはならない。

(8)その他の留意事項は?
① 結婚・子育て資金管理契約の期間中に贈与者が死亡した場合には、その贈与者に係る結婚・子育て資金の残額はその贈与者からの相続によって取得した財産として相続税の課税対象となります。即ち、贈与税の非課税措置の対象外となります。
② 扶養義務者が扶養親族等に対して必要な都度に支払う生活費や教育費を非課税とする取り扱いは、本制度の施行後も有効です。
③ 本制度の限度額(総額1,000万円)を超えて贈与を受けた場合及び、本制度に係る資金口座の契約終了時の残高には、それぞれ年に於ける贈与税の課税対象となりますのでその年の基礎控除(110万円)の適用を受けることができます。即ち、基礎控除額を超える残額については累進税率に因る贈与税の課税が行われることになりますので、残額が多い場合には不測の額の納税が必要になります。

以上

株式会社 MMS
代表取締役
佐久間 賢一
投稿日 2023.02.08

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