医院開業・経営セミナー 診療報酬改定への対応を誤ると医院経営が厳しくなる?

 令和2年度診療報酬改定について2号にわたり振り返りをしてみたいと思います。まずは新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の拡大により、特例措置が出されておりますので、既に4月診療分の請求は済んでしまっておりますが、5月診療分の請求内容の確認のためにご一読ください。

 COVID-19特例については、厚生労働省も走りながら通知を出していることが推察されます。昨日のルールが今日変わるということが起こっています、必ず通知等をご確認お願い申し上げます。
 また、全ての患者さんに必ず算定できるというものでもありませんので、算定要件をしっかりとご確認ください。
 今回の措置の趣旨は「人を動かさないことで」「医療従事者を守り」「感染拡大阻止」です。算定に迷われた場合は、思い出して頂き、医学的判断と合わせてご判断ください。



 COVID-19の感染拡大を防ぐためにステイホームが提唱されておりますが、その考え方と同様に診療報酬でも電話診療/オンライン診療の特例が時限的に発出されました。時限措置ですので3ヶ月毎に見直しの予定で、最初の見直しは7月上旬です。また、時限措置解除後は速やかに対面診療を行う事とされておりますので、ご承知おきください。

 電話診療/オンライン診療を実施すると算定出来る点数は以下の通りですが、あくまでも要点ですので、詳細な算定要件は通知等でご確認ください。
 また、「電話診療」と「オンライン診療」の違いを、誤解を恐れずに簡単に以下に記しますので、今一度考え方の整理をお願いいたします。
・電話による診療 = 音声通話によるいわゆる「電話」 ⇒ 届出不要
・オンライン診療 = いわゆる「テレビ電話」     ⇒ 要届出

【COVID-19特例の対象点数】
○初診時
・特例初診料        214点
・投薬があれば投薬に掛かる点数
○再診時
・電話等再診料        73点
・慢性疾患の診療      147点 ※詳細な要件は通知をご確認ください。
・投薬があれば投薬に掛かる点数
○対面診療時
・院内トリアージ実施料   300点

初診時の電話診療/オンライン診療については、「過去の診療録等」による基礎疾患等の確認や処方出来ない薬剤など厳格なルールが定められています。

また、初診時/再診時ともに保険証の確認の他、一部負担金の徴収など、実際の現場では悩ましい問題も含んでいますので、ファクスやキャッシュレス決済など、各医療機関の事情に合わせて選択する必要があります。

 さらに在宅医療を行っている医療機関では、電話診療/オンライン診療でも在宅時医学総合管理料の算定が可能となっておりますので、後述するURLから確認をお願いいたします。

院内トリアージ実施料については、「トリアージ」したことがポイントですので、全ての患者さんに算定できるという訳ではありません。また、よくご質問を頂戴しますが、電話再診等では算定出来ません。あくまでも来院した患者が対象です。
 また、標準予防策(スタンダード・プリコーション)は実施しているかを求められていますが、これは医療機関スタッフだけではなく、必要に応じて患者に対しても対策をする必要があります。
 なお、レセプト請求上の注意点としては、傷病名として「COVID-19の疑い」(クリニックでは確定例は少数かと思います)が必須ですので、必ずご確認ください。

 各地でPCRセンター設立の動きが活発になっていますが、PCRセンター若しくは保健所への紹介状は、診療情報提供料(Ⅰ)の算定が可能です。
 また、今後自宅療養や宿泊療養が増えていくと想定されますが、その際に実施したPCR検査は公費対象(法別28)ですが、診察料等は公費対象外ですので、そこで発生する患者一部負担金については都道府県の助成制度を利用するとの通知が4月30日付で出ております。
 想定しうる最低限の請求は以下の通りです。
初診料+各種加算(又は再診料+各種加算)・診療情報提供料・院内トリアージ実施料(算定要件を満たす場合)
     +
(請求のしかたによって異なる:請求する場合は法別28の対象となる)PCR検査実施料・微生物学的検査判断料

 上記、COVID-19特例の診療報酬等の詳細な解説等は下記のURLに情報をまとめておりますので、必ずご確認ください。
http://www.medsus.jp/index.shtml 有限会社メディカル・サポート・システムズ

◆令和2年度診療報酬改定の再確認◆

【診療情報提供料】
 診療情報提供料(紹介状)に新設された診療情報提供料(Ⅲ)を確認する前に、現在の算定要件を整理する事をお勧めします。というのも診療情報提供料(Ⅰ)には加算点数が多数あり、思いもよらない算定漏れの可能性があるためです。
 例えば、紹介状は医療機関宛に書く機会が多いので、医療機関以外に算定出来る事をご存じない方も多いので、再度確認してみてください。
診療所、病院の他に、介護老人保健施設・介護医療院(入所目的の患者)、市町村・介護事業者等(福祉サービスに必要庵情報提供)、保険薬局(薬局側で訪問薬剤を開始する患者)、精神障害者施設・介護老人保健施設(入所患者を併設等以外の医療機関に受診後、情報提供)、訪問看護担当医療機関・訪問リハ担当医療機関(訪問診療実施医師より、他の訪問看護、訪問リハ実施医療機関への情報提供(逆も算定可能))に対しても算定が可能となっています。
また診療情報提供料(Ⅱ)はセカンドオピニオンのために他院に検査等の記録も含めて紹介した場合が対象となります。
そして今回新設された診療情報提供料(Ⅲ)はかかりつけ医機能を持つ医療機関を含むやり取りが算定の基礎となるため、自院の状況は元より、近隣の医療機関の届出状況を確認しておく必要があります。
医療機関の届出状況は、地方厚生局のホームページで確認が可能です。

 また、非常に地味ですが、電話再診時の診療情報提供料(Ⅰ)の算定が認められました。急病等で患者又はその看護に当たっている者から連絡を受け、治療上の必要性から指示を行った同日に、受診先の医療機関に対して必要な診療情報を文書で提供した場合(ファクシミリ・メールで可)に算定が可能です。

【技術料は若干であるが上がり気味、検査はいつものように引き下げ傾向】
 外来で行うような処置や手術の点数は耳鼻咽喉科や眼科を中心に若干ではありますが引き上げられています。項目が多いので、処置の例のみ紹介しますので、各医療機関の算定状況に合わせてご確認ください。

・鼻処置(鼻吸引、単純鼻出血及び鼻前庭の処置を含) 12点 ⇒ 14点
※口腔、咽頭処置と併施の場合も14点
・口腔、咽頭処置                  12点 ⇒  14点
※鼻処置と併施の場合も14点
・間接喉頭鏡下喉頭処置(喉頭注入を含む)      27点 ⇒  32点
・耳管処置(耳管通気法、鼓膜マッサージ及び鼻内処置を含む)
カテーテルによる耳管通気法(片側)         30点 ⇒  36点
ポリッツェル球による耳管通気法           20点 ⇒  24点
・関節穿刺(片側)                100点 ⇒ 120点
・ストーマ処置(1日につき)
・ストーマを2個以上もつ患者に対して行った場合  100点 ⇒ 120点
・胃洗浄                     250点 ⇒ 300点
・腟洗浄(熱性洗浄を含む)             47点 ⇒  56点
・子宮腔洗浄(薬液注入を含む)           47点 ⇒  56点
・涙嚢ブジー法(洗浄を含む)            45点 ⇒  54点

 検査の個々の点数は1〜5点程度下がっているが、気をつけたいのは生化学検査などいわゆる「まるめ」項目のなかで、多項目の点数が下がっていることです。
 自院でのオーダーの項目数と新点数及び検査センターへの委託料も含めて、持ち出しが無いかを確認して頂きたい事項です。


有限会社メディカル・サポート・システムズ 
代表取締役社長              
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会
神奈川県支部 副支部長          
細谷 邦夫                

有限会社メディカル・サポート・システムズ
代表取締役
細谷 邦夫
投稿日 2023.02.25

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