医院開業・経営セミナー 診療報酬改定への対応を誤ると医院経営が厳しくなる?

 損益分岐点という言葉をお聞きになった事は有りませんか。損益の分岐、すなわち黒字になるか、赤字になるかの境目となる売上高を指します。
損益分岐となる売上げ数値を上回れば黒字、下回れば赤字となる境目を自院の数値で把握しておくことは、日々の経営においてとても重要な指標となります。
特に医療機関においては、患者さん一人当たりの診療収入、すなわち診療単価が他の事業と異なり比較的把握し易いので、単に損益分岐となる診療収入としてだけではなく、一日最低限診なければならない患者数として把握することが出来ます。
まず損益分岐を知る為には、自院の経費を2種類に分類します。
・変動費用  患者さんを診察すると発生する費用です。
       薬品、診療材料、検査委託費等
・固定費用  診療をしなくても発生する費用
       家賃、リース料、従業員給与等
損益分岐点の考え方は、毎月必ず発生する固定費用を賄う為には、幾らの診療収入を上げなければならないかというものです。
但し、その診療を行う為に必要となる変動費用分は支払わなければならないのですから、診療収入から変動費用分を差し引いた部分が実質的な利益となります。
これを限界利益と言います。
限界利益が固定費用と同額になる診療収入が損益分岐点という事です。



変動費用を個々の診療行為別に把握するのは難しいことなので、変動費を比率として計算することになります。
院外処方の内科診療所では、変動比率は15%前後となる事が多いようですが、診療科目や診療方針、院外、院内等により違いが生じますので、自院の数値をしっかり把握しなければ計算が出来ません。
自院の数値を把握する為には、自院の所得税青色申告決算書の差引所得(決算書⑦の数値)を売上金額(決算書の①)で割って頂くと変動利益率が算出できます。
この事例の場合は、88.8%となります。



固定費用の合計額は、同じく所得税青色申告決算書の計(決算書のの数値)です。



この事例の損益分岐点収入は
 36.621.800÷88.8%=41.240.765円、この数値が損益分岐点収入となります。
算出された損益分岐点診療収入は、1年間の数値なので年間の診療日数で割って頂くと1日当たりの損益分岐点診療収入が算出されます。
算出された1日当たりの損益分岐点診療収入を、自院の診療単価(レセコン、電子カルテより引用)で割って頂くと、損益分岐点となる患者数が把握できます。
損益分岐点となる必要患者数の分析
  損益分岐点診療収入÷年間診療日数÷診療単価=必要患者数

1日当たりの必要患者数で把握して頂ければ、分かりやすく意識しやすい数値として日々の診療に役立つことになります。
但し、この計算式で算出した損益分岐点は個人事業診療所の場合には固定費用を賄うだけの数値なので、更に院長先生の生活費相当額を加算して計算する必要があります。

公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 顧問
株式会社 MMS 代表取締役
佐久間 賢一
投稿日 2023.06.26

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