医院開業・経営セミナー 診療報酬改定への対応を誤ると医院経営が厳しくなる?

 令和5年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)は感染症法上の分類が5類に引き下げられたことは言を俟たないが、殊レセプト請求の話となるとなかなか厄介だったのではないだろうか。
 5月7日までと8日以降では、COVID-19特例点数のルールが変わり、算定の考え方も大きく変わった。何より厄介なのは、5類前後で名称やマスターコードが変わったことで電子カルテ/レセコンへの入力にも注意が必要となった。これにより5月診療分のレセプトで注意したいことが2点考えられる。
 1点目は7月上旬に返ってくる返戻である。前述のように5月8日以降は算定ルールが変わったが、それと同時に診療報酬個々のマスターコードも変わっている。電子カルテ/レセコンによっては、入力と同時にアラートが出るものもあるが、そのような機能がない場合には、知らず知らずのうちに古いマスターコードで請求してしまった可能性もあり得る。
 従って、7月上旬の返戻は「間違っていないのに返戻された」と返戻理由が分かりにくい可能性があるのだ。場合によっては査定のリスクもあるので、返戻・査定の通知だけでなく、必ず電子カルテ/レセコンを開き、入力したマスターコードを確認したい。8日以降のマスターコードは表1の通りである。
 2点目は請求漏れの可能性だ。8日以降のCOVID-19特例点数は、名称が非常に分かりにくくなっている。
 例えば、COVID-19陽性の患者を外来診療した場合に算定出来る救急医療管理加算は、「入院調整した場合」と「それ以外」で点数が分かれたが、名称が「特定疾患療養管理料」となり、「救急医療管理加算」で検索してもヒットしなくなってしまった。
 また、カッコ書きの部分が「100床未満の病院」と書かれており、診療所では算定出来ないとの勘違いも数多く見受けられる。
 このような表記になっているのは、準用元を表しているからなのだが、よほど勉強している医療事務員でない限り気が付かずに、5類になったから点数が無くなったと思い込み、請求漏れに繋がるケースがある。

【救急医療管理加算の名称変更】

○5月7日まで
救急医療管理加算1(診療報酬上臨時的取扱)(COV・外来診療) 900点
○5月8日以降
救急医療管理加算1(入院調整)(特例) 900点
特定疾患療養管理料(100床未満の病院)(特例) 147点
 その他にも院内トリアージ実施料は以下のように分類されたので注意が必要である。
○5月7日まで
院内トリアージ実施料(診療報酬上臨時的取扱) 300点
○5月8日以降
院内トリアージ実施料(特例) 300点
特定疾患療養管理料(100床未満の病院)(特例) 147点
 最後に注意しておきたいのは、個別指導等への対策である。COVID-19流行下での個別指導等は必要最低限に絞られていたが、令和5年度からは以前のように実施するようになっているが、その中で最近聞こえてくるのが院内トリアージ実施料の返還事例である。
 COVID-19特例点数の院内トリアージ実施料の算定要件は、COVID-19(疑い含む)の病名があることと、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」で求められる基本的な感染対策を実施することである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第9.0版
https://www.mhlw.go.jp/content/000936655.pdf


 自主返還を求められるケースで最も多いのは、COVID-19の検査がなく院内トリアージ実施料を算定している場合に、COVID-19を疑った或いは確定に至る経過がカルテに記載されていないというものだ。
 COVID-19特例に限らず、個別指導等への対策の第一歩は必要なカルテ記載があるかどうかなので、これを機会に見直してみてはどうだろうか。

表1:COVID-19特例点数新設コード一覧

マスターコード診療報酬名称点数
111016150初診料(文書による紹介がない患者の場合)(初減)(特例)214
112026750電話等再診料(特例)73
113045350院内トリアージ実施料(特例)300
113045450特定疾患療養管理料(100床未満の病院)(特例)147
113045550特定疾患療養管理料(100床未満・療養指導)(特例)147
113045650慢性疾患等の診療(特例)147
113045850救急医療管理加算1(入院調整)(特例)950
114055150緊急往診加算(在支診等以外)(特例)325
114055250緊急往診加算(機能強化した在支診等)(病床なし)(特例)750
114055350緊急往診加算(在支診等)(特例)650
114055450緊急往診加算(機能強化した在支診等)(病床あり)(特例)850
114055550在宅酸素療法指導管理料(その他)(特例)2,400
114055650酸素ボンベ加算(その他)(特例)3,950
114055750酸素ボンベ加算(携帯用酸素ボンベ)(特例)880
114055850酸素濃縮装置加算(特例)4,000
114055950設置型液化酸素装置加算(特例)3,970
114056050携帯型液化酸素装置加算(特例)880
114056150呼吸同調式デマンドバルブ加算(特例)291
114056250在宅酸素療法材料加算(チアノーゼ型先天性心疾患)(特例)780
114056350在宅酸素療法材料加算(その他)(特例)100
114056450在宅移行管理加算(特例)250
180070050救急医療管理加算1(緊急の往診等)(特例)950
180070150救急医療管理加算1(施設内療養・緊急の往診等)(特例)2,850
180070250救急医療管理加算1(オンライン)(特例)950
180070570乳幼児加算(外来診療・往診等)(特例)400
180070670小児加算(外来診療・往診等)(特例)200
180070750精神疾患の精神療法(特例)147

有限会社メディカル・サポート・システムズ
代表取締役
細谷 邦夫
投稿日 2023.07.14

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